依存から自立へ――「教えすぎない」塾の本当の価値

こんにちは。足利の学習塾 森戸塾の森戸です。

6月も半ばを過ぎ、いよいよ中学生にとって一大イベントである「総体」の時期がやってきました。

中学3年生にとっては、これが最後の大会。

長く続けてきた部活動の集大成として、全力を尽くしていることと思います。

そして、この総体が終わると、彼らの生活は大きく変わります。

これまで部活動に充てていた時間がそっくりそのまま空き、その分を勉強に充てることができるようになるのです。

いよいよここからが、本当の意味での「受験勉強のスタート」と言えるでしょう。

森戸塾でも、あと1か月ほどで夏期講習が始まります。

例年、私はこの夏期講習を「中3生を受験生に変える期間」と位置づけています。

「えっ?受験生って、中3生のことでしょ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

でも、実はこの2つ、まったく同じではありません。

中学校に進学して3年目の春を迎えれば、誰でも自動的に「中3生」にはなれます。

しかし「受験生」とは、そのうえで、受験に向かう覚悟を持ち、目標に向かって日々の行動をきちんと積み重ねている生徒のことを指します。

言い換えれば、中3生の中に「受験生」がいるわけです。

つまり、中3だからといって、全員が受験生とは限らない。そこには、決意と行動の差があるのです。

森戸塾の夏期講習は、すべての中3生を「受験生」に変えることを目標としています。

ただ問題を解かせ、知識を詰め込むだけの夏期講習ではありません。

勉強の内容はもちろん、受験の意味、受験に立ち向かう姿勢、そして毎日の生活の在り方についても繰り返し伝えていきます。

実際、毎年夏期講習が始まる前と終わったあとでは、生徒たちの表情や勉強に対する姿勢がまるで別人のように変わります。

それが、私の目指す「中3生から受験生への変化」です。

さて、先日、下野新聞社から毎年恒例の「栃木県高校別合否分布表」という資料が届きました。

これは、下野模擬テストを受けた生徒たちの入試結果を追跡調査したもので、学習塾にとっては非常に有益な進路指導資料です。

しかし、私はこの資料を見るたびに、どうしてもため息をついてしまいます。

足高をはじめとする市内の県立高校の合格者の偏差値が、例年あまりにも低いのです。

昨年度の足高の平均偏差値も、一般選抜で56.9、特色選抜で57.5と、過去の傾向と変わらず、やはり「低水準」と言わざるを得ません。

なぜそれが問題なのか。足高は一応「進学校」とされており、大学進学を目指す生徒が集まる学校と位置づけられています。

しかし、大学受験を真剣に目指すなら、入試の偏差値が最低でも60は欲しいところ。

そこを下回る状態で進学校に進んでも、3年後に満足のいく大学に合格するのは難しいというのが現実です。

つまり、「足高に合格=3年後に有名大学に合格」という単純な構図は成り立ちません。

むしろ現在の足高では、国公立大学や有名私立大学に合格できるのは一部の生徒のみであり、あまり名前の知られていない私立大学へと進む生徒が大半です。

ですから、足高を目指す生徒であっても、仮に他の地域の進学校を受けても合格できるだけの学力をつけておくべきです。

そしてそれ以上に大切なのが、「他人に依存せず、自分で学ぶ習慣」を中学生のうちから身につけておくことです。

進学校に進めば、その後に待ち受ける学習量は中学の比ではありません。

授業のスピードも速く、内容も難しくなる中で、常に誰かに教えてもらうのを待っているようでは、とたんに取り残されてしまいます。

理想的な姿としては、勉強のメインとしては自分でどんどん学び、必要に応じて学校や塾で補ってもらう、そんな自律した学びのスタイルです。

森戸塾では、この「自立した学習姿勢」を育てることを最優先にしています。

そのため、あえて「生徒の面倒を見すぎない」ようにしています。

これは、私自身が以前勤めていた大手学習塾での反省から来ている考え方です。

その塾では、生徒、特に中3生に対して極端なまでの過保護な指導が行われていました。

中3になると授業がいきなり増え、さらに秋以降は土日も休みなく、ほぼ毎日にわたって授業がおこなわれました。

土曜日は朝から晩まで塾にいて、昼も夜も塾で食事を取る生徒もいるほど。

入試の直前期には、毎日のように深夜0時過ぎまで生徒に付き合いました。

もちろん保護者の負担も大きく、経済的にも時間的にも大変だったはずです。

でも、それ以上に問題だと思ったことは、生徒の「学ぶ姿勢」が極端に依存的になってしまっていたことでした。

「先生、何かプリントください」──この言葉が、その塾の生徒たちの口ぐせでした。

自分で何を勉強したらよいかも考えず、与えられたことだけをただこなす。

それも、さらっと一度やったきりで、復習もしないで終わってしまうような学び方では、いくら時間をかけても学力はつきません。

こうした勉強の仕方では、高校入試は何とかなっても、大学入試では到底通用しません。

特にスタート地点が、他の進学校の生徒に比べて低い足高生にとっては、なおさらのことです。

だからこそ、森戸塾では、生徒を必要以上に過保護にはせず、「自分で考えて学ぶ力」を養う指導をしています。

「面倒見の良さ=良い塾」と思われがちですが、それは子育てと同じで、行き過ぎると生徒の自立を妨げて逆効果となります。

私は3人の子どもの父親でもありますが、子育てにおける究極の目標は「親の手を借りずに、自分の力で生きていけるようにすること」だと思っています。

塾もまったく同じです。

私の塾を巣立ったあと、次の目標に向かって自分の力で学んでいける、そんな生徒を育てたいと考えています。

高校に合格させて終わりではありません。

その先も自分の力でしっかりと歩んでいける、そんな力を育てることも私の大切な使命です。

現に、森戸塾の卒業生たちは、足高からでも努力を続け、国公立大学や有名私立大学に合格している生徒がたくさんいます。

進学校以外に進んだ生徒も、高校で自分の関心のある分野を深め、将来の道を切り開いています。

これからも私は、学力を高めるだけでなく、「自ら考え、自ら行動し、自分の未来を切り開く力」を育てる指導をしていきたいと思っています。

今日はこのへんで。