私の塾には、毎年、年間を通して大手学習塾から移ってくる生徒がたくさんいます。
そして、その理由は驚くほど共通しています。
「これ以上通っていても意味がないと思ったから」
もちろん、最初から不満があって入ったわけではありません。
むしろ、多くのご家庭は「有名な大手塾なら安心だろう」と考えて入塾しています。
しかし、実際に通わせてみると、思っていたものとは違った。
そう感じて転塾を決断されるケースが本当に多いのです。
では、何が「意味がない」と感じさせるのでしょうか。
それは、授業そのものがきちんと成立していないということです。
授業中なのに、生徒同士がおしゃべりをしている。
講師は注意をするものの、本気で叱らない。
静かになったと思ったら、今度はスマートフォンをいじっている。
中には、勝手に教室を出て行ってしまう生徒までいるそうです。
そんな状況が毎回続けば、「こんな環境で成績が上がるはずがない」と感じるのは当然です。
そして実際、そのような理由で私の塾へ移ってくる生徒は少なくありません。
私は、それはとても賢明な判断だと思っています。
多くの保護者は、「大手だから安心」「有名だから間違いない」と考えます。
たしかに、普通の商品やサービスであれば、その考え方はある程度正しいでしょう。
たとえば飲食チェーン店。
有名なチェーンであれば、だいたい期待通りの料理が出てきます。
しかも、どの店舗へ行っても品質はほぼ一定です。
なぜそんなことが可能なのか。
それは、多くの飲食チェーンには「セントラルキッチン」と呼ばれる仕組みがあるからです。
工場で調理工程の大部分を済ませ、各店舗には完成に近い状態で届ける。
店舗では、それを温めたり、簡単な仕上げをするだけで提供できます。
さらに、その作業も「何分温める」「何グラム入れる」といった形ですべて数値化されている。
だから、だれがやっても同じ品質のものを提供できるわけです。
しかし、学習塾はそうはいきません。
なぜか。
学習塾の商品は「物」ではなく、「人」だからです。
そして、授業や指導は、数値化できないものだからです。
まず、「塾の商品は人である」という点について考えてみましょう。
生徒の成績が上がるかどうかは、塾の規模や建物の立派さ、知名度とは、実はほとんど関係ありません。
もし、「大手だから成績が上がる」が本当なら、大手塾の生徒は全員成績が上がり、個人塾の生徒は誰も成績が上がらないはずです。
しかし、現実はそんな単純なものではありません。
結局のところ、成績が上がるかどうかは、「どこの塾で教わるか」ではなく、「だれに教わるか」にかかっているのです。
たとえ有名な塾に通っていたとしても、生徒の成績を本当に上げられる講師に出会えなければ、成績は上がりません。
これは、おそらく保護者の方にも覚えがある話ではないでしょうか。
学生時代、学校にもいろいろな先生がいたはずです。
ただ教科書を読むだけで退屈な先生。
何を言っているのか分かりにくい先生。
その一方で、授業が分かりやすく、なぜか引き込まれ、「勉強してみようかな」と思わせてくれる先生。
そういう先生は、確かに存在していたと思います。
塾もまったく同じです。
有名な塾だからといって、講師全員が優秀ということはありません。
これは、かつて私自身が大手学習塾に在籍していた経験から断言できます。
もちろん、素晴らしい講師はいます。
実際、「この先生は本当にすごいな」と思う人もいました。
しかし、そういう先生はごく一部です。
そして、そのような先生たちの多くは、最終的に独立して自分の塾を開いていきました。
なぜか。
自分の力でやっていける自信があるからです。
そして何より、自分の理想とする教育を、自分の責任で提供したいからです。
もちろん、私もその一人です。
私は大手学習塾時代、生徒アンケートにもとづく講師ランキングで、数百人いる講師の中でも常に上位の常連でした。
1位、2位を争うことも珍しくありませんでした。
ですが、そんな私から見ても、「この人にはかなわないな」と思う講師は確かにいました。
ただし、本当に数えるほどです。
つまり、校舎数が多く、講師数も膨大な大手塾で、そういう講師に当たる確率は決して高くありません。
さらに、授業や指導というものは、そもそもマニュアル化に向いていません。
大手塾にも、一応マニュアルのようなものはあります。
ですが、授業は人間相手です。
同じ対応をしていればうまくいくほど単純ではありません。
授業中、生徒の反応が悪ければ説明の順番を変える。
理解が浅ければ、別の例を使う。
集中が切れてきたら、話し方やテンポを変える。
授業というのは、その場で常に判断を求められる仕事なのです。
だから、同じ単元でも、一つとして同じ授業はありません。
授業とは、単に知識を伝える作業ではないのです。
講師の経験。
観察力。
瞬発的な判断。
空気を読む力。
生徒の変化を察知する力。
そういったものが複雑に絡み合って、初めて「いい授業」になります。
だからこそ、塾選びで最も大切なのは、「どこの塾か」ではなく、「だれが教えているのか」なのです。
ところで、大手塾から移ってくる生徒のお母さんたちに、「なぜ最初にその塾を選ばれたのですか」と聞くと、ほとんど同じ答えが返ってきます。
「無料イベントがあったから」
「体験が楽しそうだったから」
「子どもが行きたいと言ったから」
もちろん、それ自体を否定するつもりはありません。
ですが、よく話を聞いてみると、「楽しかった」の中身が問題なのです。
授業が分かりやすくて楽しかったのではなく、
イベントが楽しかった。
景品がもらえて嬉しかった。
友達と騒げて楽しかった。
そういうケースが少なくありません。
しかし、私が考える「塾の楽しさ」は違います。
勉強が分かるようになる。
できなかった問題が解けるようになる。
成績が上がる。
自信がつく。
私は、そこにこそ本当の楽しさがあると思っています。
ただ、その楽しさは、景品のようにその場で手に入るものではありません。
ある程度の努力も必要です。
時には我慢も必要です。
だからこそ、本物の達成感につながるのです。
私は、安易な無料イベントや派手な特典で生徒を集めようとは思いません。
それは、自分の指導に自信と誇りを持っているからです。
もちろん、すべての人に合う塾など存在しません。
ですが、少なくとも私は、「勉強をできるようにすること」に本気で向き合っています。
だから私は、私の塾の価値を理解し、「本気で変わりたい」と思っているご家庭だけ来てくだされば、それで十分だと思っています。
塾は、通うことが目的ではありません。
成績を上げ、子どもの未来を変えるために通う場所です。
どうか、「有名だから」「大手だから」という理由だけで塾を選ばないでください。
本当に見るべきなのは、
そこで、だれが、どんな思いで子どもたちと向き合っているかです。
