決戦前夜の教室で思ったこと

栃木県の県立高校の一般選抜試験が終わりました。

森戸塾では毎年、一般選抜の前の1週間は直前の集中授業をおこなっています。

今年も2月26日から入試前日の3月4日にかけての7日間、気合を込めて授業をおこない、生徒たちを送り出しました。

毎年のことなのですが、最後の授業を終えて、生徒たちが帰り、だれもいなくなった教室にぽつりと一人でいると、言い知れぬ寂しさが襲ってきます。

それまで、お互いにもう嫌というほど顔を合わせてきました。

授業のたびに会い、問題を解き、質問を受け、励まし、そしてまた次の授業で顔を合わせる。

そんな時間をずっと積み重ねてきました。

しかし、これからはもう、そうではなくなります。

そう思うと、何だか信じられないような気持ちになるのです。

もちろん、生徒たちは翌日に決戦を控えています。

そんな感傷にひたっているどころではないでしょう。

緊張をしながら、翌日の本番に備えているはずです。

しかし、最後の授業が終わると、私は翌日の生徒たちの善戦を祈りながら、毎年同じような気持ちになります。

ただ、感じているのは寂しさだけではありません。

それと同じくらい、いや、それ以上に強く感じるのは誇らしさです。

1年前の彼らは、まだ「受験生」と呼ぶには、行動や考え方がそのレベルにまでになっていませんでした。

頭では勉強をしなければならないことはわかっている。

しかし実際には、そこまで行動が伴っていない子も少なくなく、考え方や発言もどこか子供じみた感じの子が多かったように思います。

しかし、この1年間の受験勉強を通して、彼らは確実に成長しました。

考え方も、行動も、そして顔つきも、大人と呼んでいいほど立派に成長したと思います。

1年前であれば、どこか仕方がなくしていた感じの受験勉強でした。

しかし、この1年間で、彼らの勉強に向かう姿勢は、「誰かにやらされるもの」ではなく、「今の自分、そして将来の自分にとって必要だからこそ取り組むもの」へと変わっていきました。

一般選抜の合格発表は11日です。

もちろん結果は気になるところですが、結果がどうであっても、彼らはこれからの3年間をきっと充実したものにし、その先の人生を自らの手で素晴らしいものにしていくことでしょう。

私はそう確信しています。

さて、最近になって気がついたことがあります。

私は塾の先生になってから、もう30年近くになります。

長い間、私は塾の先生の仕事とは、生徒が持っていないものを「与えること」だと考えていました。

例えば、勉強に関する知識はもちろんのこと、勉強に対するモチベーションややる気、そういったものを与えることが仕事だと思っていたのです。

しかし最近になって、少し違うのではないかと思うようになりました。

本人がそれを自覚できていなかったとしても、勉強に対するモチベーションややる気、向上したいという意欲は、実はもともと生徒の中に存在しているのではないか?

そんなふうに感じるようになったのです。

つまり、それは私が与えるものではなく、生徒の中にすでにあるものなのではないかということです。

だからこそ大切なのは、それを生徒自身がしっかりと自覚できるようにしてあげることです。

生徒の心の奥深いところにあるものを「引き出してあげる」こと。

それこそが塾の先生の仕事なのではないかと、最近になって気がつきました。

それを引き出すことができれば、生徒は自分で正しく考え、自分でやるべきことを見つけ、そして自ら前に進んでいくことができるようになります。

他の塾にはない森戸塾の特徴といえば、

・本当のプロによるわかりやすい授業
・勉強に集中できる静かな環境
・徹底した家庭学習指導

こういった点が挙げられると思います。

しかし、これらはあくまで指導の目に見える部分です。

実は森戸塾の特徴は、目に見えない部分にこそあるのではないかと、最近になって思うようになりました。

具体的に言えば、私は授業の冒頭などで、生徒たちにさまざまなことを語りかけます。

勉強についての具体的な話はもちろんですが、学ぶということについて、考えるということについて、働くということについて、人生について、親子の関係について、社会について…

さまざまなテーマについて語りかけます。

「お前、金八先生かよ!」というくらい語ります(笑)。

長いときには10分以上にわたって話すこともあります。

そんなことを、もう20年以上も続けてきました。

もちろん、先日送り出した3年生たちにも、たくさんの時間をかけてたくさんのことを語りかけてきました。

振り返ってみると、そうした時間こそが、彼らの中にあるものを引き出すことにつながっていたのではないかと思います。

英語や数学の知識を教えることはもちろん重要です。

保護者の方々も、それを期待して塾に通わせているはずです。

しかし、学ぶ姿勢がなければ、どれほど良い説明をしても、それは生徒の中に深く残ることはありません。

逆に、しっかりとした姿勢さえあれば、人は自分から学び、それを活かしながら力強く生きていくことができます。

だから森戸塾は、数学の解法や英語の文法をわかりやすく教えるだけの塾ではありません。

学ぶ姿勢を、生徒自身の中から引き出す塾です。

これからも私自身がさまざまなことを学び、経験し、それを自分の言葉で生徒たちに伝えていきたいと思っています。

そして生徒たちの中にある可能性を少しでも引き出すことができるよう、これからも自分自身を磨き続けていきたいと思います。