こんにちは。足利の学習塾 森戸塾の森戸です。
今回は森戸塾物語の第3回目です。
内装工事も無事に終わり、一通り備品も揃ったことによって、とりあえず教室が完成しました。
あとは肝心の生徒募集です。
当時は現在と違って、ダイレクトメールの発送が比較的容易でした。
そこでまず取り組んだのはダイレクトメールの準備です。
私はA4版の紙2枚にわたって、開業にかける意気込みや決意を熱く書きつづりました。
それを妻と2人でひたすら三つ折りにして、何日もかけて封筒に詰める作業をしました。
そして、元学町にある郵便局の本局に持ち込みました。
かなりの通数だったのでしかたがありませんが、何十万円という単位の郵送代金に、思わず頭がクラクラしそうになりました(笑)。
また、新聞に折り込むチラシの作成もおこないました。
ほんとうはカラーの派手なものにしたかったのですが、予算の都合で単色のたいへん地味なのものとなってしまいました。
しかし、その代わりに開業に向けた思いのたけを、すべて余すことなく文面にぶつけました。
折り込み代金は1枚あたりわずか数円なのですが、1回につき何万枚という単位で折り込みますので、印刷代と合わせてこちらもかなりの金額になります。
福沢諭吉が、まるで羽根でも生えているかのように、つぎつぎとお財布から飛んでいきます(笑)。
かつていた大手学習塾でもこのような宣伝はおこなっていましたが、もちろん個人のお金ではなく会社のお金によるものです。
会社に依らずに、自分の力だけで仕事をしていく大変さを、このときはじめて実感しました。
しかし、私の塾では現在こういった形での宣伝は一切おこなっていません。
保護者様が広めてくださる口コミだけで、毎年かなりの人数の生徒が集まってくれるからです。
当時のことを思うと、ほんとうに感謝しかありません。
さて、ダイレクトメールの発送とチラシの折り込みが完了し、あとは問い合わせの電話を待つばかりとなりました。
完成したばかりの真新しい教室で、私は机の上の電話が鳴るのを待ちました。
大手学習塾では、宣伝をするとすぐに電話が鳴り始めます。
まだ現実のきびしさを知らない私は、当然同じようになるだろうと考えていました。
さあ、これからじゃんじゃん電話が鳴るぞ!
私は期待を込めて電話が鳴るのを待ちました。
しかし、いくら待っても鳴りません。
そこで私はふと思いました。
これって、電話線つながってないんじゃない?
工事業者の手違いで、電話線がつながってないのではと思ったのです。
そこで私は携帯電話を取り出し、机の上の固定電話にむけてかけてみました。
すると、けたたましく着信音が鳴り響きました。
なんだ、ちゃんとつながってるじゃん。
電話が鳴らない原因が電話線ではないことがわかり、私は安心と落胆が入り混じった何だか複雑な気持ちとなりました。
今から振り返ると笑ってしまうお話ですが、あとから、自営業を始めた人には初日にありがちな話だと聞いて、自分だけではなかったことに安心しました。
それでも結果として、その日のうちに1件ほど問い合わせをいただくことができました。
後日くわしく話を聞きたいということで、まずはその1件で大きくホッとしたのを覚えています。
それからも、なかなかな鳴らない電話との格闘が続きました。
駅前の交差点の信号機から、しきりに「かっこ~」や「ぴよぴよ」といった電子音が流れてきて、シーンとした教室の中に響きわたります。
それを1日中聞いているので、家に帰ってからも耳に残り、頭の中でリフレインして困りました(笑)。
しかしポツポツとではありますが、しだいに問い合わせが入るようになってきました。
そして、大手学習塾時代に教えていた生徒の兄弟など、かつての私を知る人を介して、少しずつ生徒が集まってきました。
ただ、私がはじめに想定していた人数にはほど遠く、やっと経費がまかなえるかどうかという状態でした。
大手学習塾時代に、目の前にいたたくさんの生徒たちは、自分という個人を信頼して集まってくれた生徒ではなく、大手学習塾の看板を信頼して集まってくれた生徒たちであった。
そんな当たり前のことに、その時はじめて気づかされました。
このまま生徒が集まらなかったら、オープンしても塾を長く続けることができないのは明白です。
そうなったら会社の人たちは、それ見たことかと笑うだろうな。
いっそのこと、荷物をまとめて埼玉の実家に身を寄せようか。
そんなことばかりが頭をよぎり、私は独立に踏み切ったことを後悔し始めました。
しかし、刻々とオープンの日は近づいています。
少ないとはいっても、私の指導を期待して待っている生徒たちもいます。
私は気を取り直して考えました。
まずは集まってくれた生徒のために、やるだけのことをやってみよう。
そしてダメならそのとき考えればいい。
そのように考えて、オープンに向けての準備をさらに進めました。
今日はこのへんで。