森戸塾物語 その4

こんにちは。足利の学習塾 森戸塾の森戸です。

今回は森戸塾物語の第4回目です。

オープンに向けてしなければならないことが、さらにありました。

それは勉強です。

大手学習塾では講師ごとに担当の教科が決まっており、1人の講師がすべての教科を教えることはありません。

ちなみに私は大学で英語を専攻していたこともあり、大手学習塾ではおもに英語を担当していました。

しかし、独立となるとそうはいきません。

人を雇ってお給料を払う余裕などとてもありませんので、自分ひとりですべての教科を教えなければなりません。

妻は大学時代に数学を専攻していたので、数学の授業だけでも任そうかと考えました。

しかしまだ子どもも小さく、夜間に預けることのできる実家も近くにないため諦めました。

ちなみに私も妻も足利の出身ではなく、2人とも県外の出身です。

私は本屋さんに行き、中学生用の参考書と問題集を何冊も買い込みました。

さすがに鉢巻きこそはしませんでしたが、電話が鳴るのを待つかたわら、中学生にもどった気分で勉強のやり直しをしました。

しかし、最も困ったのは数学です。

じつは学生時代にいちばん苦手だったのが数学でした。

それでも中学時代はなんとか乗り切りました。

しかし、高校に進学するととたんについていけなくなり、1年生の終わりを待たずして、私立文系行きが決定的になるほどの苦手ぶりでした。

したがって、真面目に数学の勉強をするのはほぼ高校入試のとき以来です。

内容なんてまともに覚えているはずがありません。

特に手こずったのが1次関数の文章題でした。

オープンの日は着々とせまっています。

そこで、夫の威厳を守るためにできればそうしたくはなかったのですが、どうしてもわからないときは、妻に丁重に頭を下げて教えてもらいました(笑)。

しかし、私はこの時はじめて数学の面白さに気づくことができました。

そして、学生時代になんでもっと真面目に勉強をしなかったのかと後悔をしました。

さて、平成16年6月1日、いよいよオープンの日がやってきました。

最初の授業がどの学年の何の授業であったかは、もう覚えていません。

しかし、やっと始まったという嬉しい気持ちでいっぱいだったことは覚えています。

その日の授業が終わり、生徒たちを見送りに外に出ると、近くにある朱学館さんの前に、お迎えの車がずらりと並んでいるのが見えました。

いくつもに連なる赤いテールランプの列が、その時の私にはものすごくうらやましく思えました。

俺もいつかは絶対にあんな塾を作ってみせる!

そのためには、もっとたくさんの生徒たちに信頼してもらえるよう、精一杯がんばろうと心に誓いました。

ところで、オープンしたての塾には勉強が得意な子はあまり入ってきません。

どちらかというと苦手な子がメインです。

私の塾もご多分にもれず、ほぼそのような形でスタートしました。

しかし、まだ生徒の人数が少なかったということもあり、一人ひとりをだいぶ細かく指導することができました。

当時からくらべると、私の指導力もだいぶ上がりましたので、今であればある程度たくさんの人数でもしっかりと指導することができます。

しかし、まだ指導に不慣れな教科があったことなども考えると、少ない人数でスタートしたことがかえって良かったのかもしれません。

ある生徒が、入塾してから1回目の定期テストの数学で、80点を越える点数を取ってきました。

前回の点数を聞いてビックリです。

前回はなんと20点台だったそうです。

さらにビックリしたのは、塾に入るのは今回が初めてではなく、少し前まである別の塾に通っていたそうなのです。

どうしてそこを辞めたのかを聞くと、どうやら辞めたというよりも、辞めさせられたらしいのです。

成績が悪すぎて、うちではもう面倒を見れないので辞めてほしいと言われたそうです。

ずいぶんひどいことを言う塾もあるものだと驚きました。

そしてそれと同時に、なぜその塾はこの生徒の持つ可能性に気づけなかったのだろうと思いました。

よその塾のことですから、くわしい事情はわかりません。

しかし、自分はどのような生徒であっても全力で指導をしようと、心にそう決めました。

もちろん、点数がアップしたのはその生徒だけではありません。

ほかの生徒たちも続々と飛躍的な点数アップを果たしました。

保護者の方からも、森戸塾に入ってから家でもだいぶ勉強をするようになったなど、とても嬉しいご報告をいただくことが増えていきました。

そして、ゆっくりとではありますが、生徒や保護者様の間で紹介の輪が広がり始めました。

これならどうにかなるかもしれない。

経営的にはまだまだ不安定な状況が続いていましたが、私は少しずつ手ごたえを感じ始めていました。

6月のオープンということで、森戸塾の最初の1学期はすぐに終わりを迎えます。

私は夏に向けて次なる準備に取りかかりました。

今日はこのへんで。