こんにちは。足利の学習塾 森戸塾の森戸です。
早いもので12月ももう後半です。
来週からは中3の冬期講習が始まります。
1日5時間にもおよぶ授業が、合計で10日間おこなわれます。
「1日5時間も!」と思うかもしれませんが、授業をする側も受ける側も真剣なので、あっという間に時間が過ぎます。
ところで、冬期講習で思い出すことがあります。
もう何年も前の話になりますが、冬期講習の真っ最中に、教室の前でドラマの撮影がおこなわれたことがありました。
確かTBSだったと思いますが、草彅剛さん主演の「冬のサクラ」というドラマです。
撮影は朝から夕方までおこなわれました。
授業の合間に外を見ると、見慣れた風景のなかに草彅さんが立っています。
なんだかとても不思議な光景でした。
オンエアを見みると、森戸塾がバッチリ写っていました。
道の上にたたずむ草彅剛。
そして、その横には森戸塾。
これまた、私にとっては何とも不思議な映像でした(笑)。
さて、私はもちろん俳優ではありませんが、たまに「演技」をすることがあります。
生徒を叱る時です。
「本気で叱らないんですか?」と言われそうなので、くわしく説明をします。
生徒を叱るとき、気持ちはもちろん本気です。
しかし、そのまま叱ると「叱る」ではなく「怒る」になってしまう可能性があります。
さらに、人間はいったん怒ると、ますます怒りたい気分になってしまうものです。
そういう経験はないでしょうか?
お子さんを叱っていたら、だんだんと腹が立ってきて、お説教が止まらなくなってしまったみたいな感じです(笑)。
ですから、そうならないように、生徒を叱るときは冷静になって、努めて叱る「演技」をするのです。
本来の演技の意味とはちょっと違うかもしれませんが、これが、私の言うところの「演技をする」ということです。
もう、だいぶ前の生徒になりますが、私が叱ったことによって、変わることができた生徒がいます。
名前をS君とします。
このS君ですが、なかなか本気になれない中3生でした(笑)。
中3生は例年、早い子だと夏休みあたりから本気になります。
そして、9月が終わる頃には、ほとんどの生徒が「本気モード」に入ります。
しかし、S君は10月になっても変わりません。
「覚えてきなさい」と言われたことも、中途半端にしか覚えてきません。
とりあえず、授業は真面目に受けていますが、ほかの生徒にくらべると、あまり真剣さが見られません。
そのような様子ですから、下野テストを受けても、結果は当然「努力圏」です。
そんな彼に、私はたびたび「警告」を発していました。
ことあるごとに「このままじゃ受かんないぞ!」と声をかけていたのです。
しかし、まったく変わりません。
「そろそろタイムリミットだ」
10月も終わりに近づいた頃、私は決断しました。
私はS君を授業後に残して、彼にこう言ったのです。
どう考えているかわからないけど、何か奇跡みたいなことが起こって、勉強しなくても合格できるなんてことは絶対にないからね。
よく、塾とか家庭教師のCMで「奇跡の合格」とか言うけど、奇跡っていうのは何もないところには起こらないんだよ。
奇跡はね、努力した人のところにだけにしか起こらないんだ。
だから、このまま勉強しなければ、不合格で終わるだけだからね。
合格はしたいけど、勉強したくないというのは通用しないよ。
もう、タイムリミットが迫っているから、いますぐ、ここで決断しなさい。
やるの? やらないの? どっち?
すると、S君は小さな声で言いました。
「やります」
その日からS君は変わりました。
「覚えてきなさい」と言われたことは確実に覚えてくるようになりました。
表情にも真剣さがうかがえるようになり、以前とは違って、すっかり受験生の顔です。
このように、生徒を叱るということも、塾の先生の重要な仕事なのです。
叱られる方はもちろんのこと、叱る方もあまり気分がいいものではありません。
ですから、あまりしたくない仕事であることは確かです。
しかし、個人差もありますが、中学生はまだ考え方が大人になりきれていない年代です。
ですから、そのような中学生たちをきちんとした方向に向かわせていくことも、塾の重要な役割なのです。
そして、それがしっかりとできる学習塾こそが、中学生の指導にふさわしい塾なのです。
さて、その後、S君はどうなったでしょうか?
見事、志望校に合格しました。
合格発表の日、自分の番号を見つけると、すぐに教室まで報告に来てくれました。
別の塾に通っていた友達が、何人も不合格になったことを教えてくれました。
そして、S君はこう言いました。
「あのとき、先生に叱ってもらったおかげで合格できました」
「よかったね」と言いながら、私は心の中でこうつぶやきました。
「叱らなくても合格してくれれば、ほんとうはそれが一番だったんだけどね」(笑)
今日はこのへんで。