こんにちは。足利の学習塾 森戸塾の森戸です。
昨日、太田のイオンの書店をのぞくと、こんな本が目に入りました。
「ドイツではそんなに働かない」(角川新書)
著者の隅田貫氏は、20年間にわたりドイツで働いた経験を持っています。
そして、その経験から学んだドイツ人の働き方を、この本の中で紹介しています。
ドイツと日本はともに第2次世界戦の敗戦国です。
そして、戦後は技術力を活かした工業国として、著しい復興を遂げたという点で共通しています。
しかし、両国民の仕事に対する考え方は大きく異なり、それがさまざまなデータとなって現れています。
現在、国全体のGDPは日本は世界で3位、ドイツは4位となっていて、日本がドイツを上回っています。
しかし、これを国民1人あたりのGDPでくらべると、日本は24位、ドイツは10位で、順位が逆転します。
また、1人あたりの年間労働時間をくらべると、日本は1,680時間、ドイツは1,363時間で、317時間ほどの差があります。
この317時間の差は、1日8時間で計算すると、40日間分の労働時間に相当します。
ドイツ人は、日本人よりもはるかに少ない労働時間で、日本人よりもたくさんのお金を稼いでいるのです。
著者によると、この違いは、ドイツ人の徹底的に効率を重視した働き方によるものだそうです。
効率的な働き方と聞いて、思い出す出来事があります。
私がかつて勤めていた大手学習塾は、体育会系のノリがきわめて強く、社員に対する根性論の押し付けが激しい会社でした。
上司が思いつきでつぎつぎと仕事を増やすので、それをこなすために、社員が朝まで帰れないということが日常茶飯事でした。
会社全体の売上は悪くなかったものの、現場で働く社員はいつも疲弊をしていて、心身を病んで辞めていく人が後を絶ちませんでした。
その塾には毎年2月、受験直前の中3生を対象とした、オリジナルの模擬テストがありました。
下野テストのような業者主催の模擬テストであれば、問題の作成から採点などは、すべてその業者任せです。
しかし、オリジナルのテストとなると、事前の問題作成はもちろんのこと、採点からデータの入力までを、すべてその塾の現場でおこなわなければなりません。
校舎によっては何百人もの中3生がいるので、そのようなところでは、答案の処理に膨大な時間がかかります。
ある年のことです。
当時、本社の所属社員だった私は、その塾のなかでも、最大規模の校舎の採点を手伝うことになりました。
事前にある程度の覚悟はしていましたが、作業はきわめて長時間に及びました。
上からの指示がころころと変わり、そのたびに作業が中断するのです。
そのため、作業全体がなかなか進まず、すべての処理が終わったときには、すでに朝方になっていました。
「あ~、もう2度と勘弁!」
私はふらふらになりながら家路につきました。
そして1年後、再びテストの時期がやって来ました。
私はまたもや、前の年と同じ校舎の手伝いとなりました。
しかし、その年の頭に人事異動があり、前の年とは違った人が、校舎の責任者となっていました。
その日の朝、私は現場に到着して驚きました。
テストの実施から採点、データの入力から送信までの細かい手順が、校舎独自の手順として決められていたのです。
その手順は、何百人もの答案を、正確に素早く処理するために考え抜かれたものでした。
実際におこなってみると、途中でトラブルもなく、作業は順調に進みました。
そして、あっけないくらいの短い時間で、すべてが完璧に終了したのです。
その日は特に疲れることもなく、予想よりもはるかに早い時間に帰宅することができました。
同じ作業でも、それを指示する人によって、ここまで違うとは衝撃的でした。
行き当たりばったりの仕事と、効率を重視した仕事の違いを、まざまざと見せつけられた思いでした。
その後、責任者だったその人は、独立して自分の塾を開きました。
すでに20年ほどが経ちますが、相変わらずの活躍ぶりが、塾のホームページなどからもうかがえます。
私も自分の塾に活かせることはないかと、たびたび見て参考にさせてもらっています。
大手学習塾を辞めて、自分の塾を開く講師は大勢いますが、そのほとんどが5年前後でつぶれてしまいます。
そのいっぽうで、5年を超え、10年、20年と続く塾もあります。
長く続く塾に共通しているのは、その塾の経営者が、独立以前から「できる人」だったということです。
だからこそ、生徒の指導面にも光るものがあり、それがその塾の人気につながっているのです。
いくら大手学習塾での勤務経験があっても、ほかの人にはない優れた能力や考え方がなければ、独立して長く塾を続けていくことはできません。
したがって、長く続いている個人塾は、それだけでも価値があると言えるのです。
ぜひ、保護者様の塾選びの参考にしていただけたらと思います。
今日はこのへんで。