子どもの事情

こんにちは。足利の学習塾 森戸塾の森戸です。

ほぼ1か月ぶりの更新となってしまいました。

年末から中3の冬期講習が始まったことと、全力で指導にあたったため、心身ともに激しく消耗をしてしまったことが原因です。

しかし、気力も体力も十分に回復したので、またどんどんと更新していきたいと思います。

さて、私立高校の入試が始まりました。

私の塾の生徒については特に問題もなく、入試前に予想していた通りの順当な結果が出ています。

授業の緊張感も日増しに高まってきており、彼らの真剣さがひしひしと伝わってきます。

このままの調子で2月の特色選抜、そして3月の一般選抜もがんばってもらいたいと思っています。

受験生の「真剣さ」ということで、思い出したことがありますので、今日はそのことについて書こうと思います。

今から10年以上前の話です。

確か12月だったと思いますが、ある卒業生の保護者から電話をもらいました。

用件は、下の兄弟の指導をしてほしいというものでした。

聞くと兄弟は中3で、中1のときからほかの塾に通っているとのことです。

下野テストの結果から、とても志望校に受かりそうもない状況だということです。

そこで、私の塾ならどうにかしてくれるかもしれないと思い、あわてて電話をかけてきたそうなのです。

私の塾の場合、上の兄弟を通わせてくださったご家庭は、ほぼ100パーセントの割合で下の兄弟も通わせてくださいます。

3人兄弟を全員通わせてくださるご家庭もめずらしくありません。

また、大変ありがたいことに、入試の結果が思わしくなかった場合でも、私の指導を評価してくださり、下の兄弟を通わせてくださるご家庭もあります。

もちろん、電話をいただいたご家庭の場合、上の兄弟は第一志望に合格しています。

しかも、入塾時には志望校に合格できるだけの学力はありませんでしたので、補習などをかなりして、成績向上の手助けをしました。

それにもかかわらず、下の兄弟をほかの塾に通わせたことを不思議に思い、私はそのわけを聞いてみました。

「どうしてほかの塾に?」

「友達と同じ塾がいいと言うので」

「どこの塾ですか?」

「◯◯です」

授業が騒がしく、生徒が塾にほぼ遊びに行っているような状態であることが、塾業界のなかでは有名な塾です。

私にとって生徒の指導は、対価をいただいての「仕事」ですから、それについて何か特別の感謝をしてほしいという気持ちは、もちろんありません。

しかし、仕事に対する正当な「評価」はしていただきたいと思っています。

対価をいただかない部分も含めて献身的に指導をおこない、それにより大きく成績を伸ばして、志望校に合格させたことは、私にとっては「評価」をしていただきたいところでした。

ですから、たとえ本人の希望があったにせよ、下の兄弟を別の塾に通わせたということは、このご家庭は、私の仕事に対してさほどの「評価」をしていなかったのだと思い、とても残念に感じました。

しかも、成績の上がらない塾に3年近くも通わせたあとで、切羽詰まって「どうにかしてくれ」と頼まれても、私にはどうすることもできません。

いくら、この道のプロといっても、志望校にまったく届かない成績の生徒を、たった数か月の指導で合格させることは不可能です。

私の塾に限らずですが、そんな「都合のいい塾」はこの世の中には存在しません。

また、そんなふうに「都合のいい塾」と思われたのも残念でした。

私は、入塾の希望をお断りしました。

しかし、私のプライドがそれを許さなかったからではありません。

入試の結果に責任が持てないということと、実はあともう一つ、もっと深い理由がありました。

それは、私の塾の生徒たちの顔が思い浮かんだからです。

必死になって受験勉強に取り組んでいる生徒たちの顔です。

毎週、私から出される多くの課題を黙々とこなし、ほとんど休むことなくコツコツと通い続け、無駄なおしゃべりなどいっさいせずに、必死になってがんばっている生徒たちの顔です。

彼らの「真剣さ」はおそらく足利ナンバーワンです。

そのような雰囲気の中に、そうでない生徒を加えることは到底できません。

経営的に考えれば、売り上げアップですから、入塾を許可したほうがいいに決まっています。

しかし、そうすることは、今いる生徒たちに対して、とても失礼なことになります。

そのような理由で、私はその生徒を受け入れなかったのです。

ちなみに、この話は現在の私の塾では起こり得ない話です。

なぜならここ数年、私の塾の中3クラスは、早くのうちから定員になってしまうからです。

子どもには子どもの事情があることはもちろんです。

しかし、ものごとには「子どもの事情を優先させていいもの」と「そうでないもの」があります。

それをしっかりと見極めて、子どもの将来にとって最良の選択をすることが親の務めではないでしょうか。

今日はこのへんで。